ねじ業界コラム

市場を鋭くスクリュー!博士のねじ業界コラム

建築用ファスナー業界の最先端で活躍する、ライヴ・ファブレスの“ねじ博士”による業界コラム。
国内外における市場動向の背景や実態に至るまで、斬新な視点で業界を鋭く“スクリュー”していきます。

2017/03/22

2017年度 建築用ファスナー業界の需給の見通し

2016年度もあと僅かとなり、今年度の住宅着工棟数統計が発表されました。前年度に比べ、マイナス金利の恩恵によって住宅着工棟数は通期総合で、戸建・集合・借家・店舗事務所すべてにおいて前年比5%以上の増加になり、全着工棟数は920,537戸となりました。(※2016年1月〜12月は967,237戸)

建築用ファスナー業界全体でも在庫調整が進み、9月以降はフル生産の会社が増加。2016年4月〜2017年3月までの生産数量は前年比を超える状況になっています。しかしながら、建築ファスナーは海外からの輸入品が多いため、昨年末からの円安・海外メーカーの値上げなどによる価格高騰の影響により「生産を日本国内の工場へと移行」する動きがあったことが「国内工場需要増」の一因になったとも考えられます。

2017年4月以降は国内材料の値上げと輸入材料の高騰により建築ファスナー全体の値上げが予想され、来年度の建築価格の上昇が2017年度の住宅着工棟数にどのような影響があるのか注視する必要があります。

〈建築用ファスナーの国内生産移行における問題点〉

(1) 製造設備の更新が追い付いていない(工作機械メーカーの縮小)
(2) 熱処理・表面処理などの外注業界の寡占化が進み、需給バランスが崩れている(建築ファスナーの外注業者が減少)
(3) 輸入材料の大幅値上げによる、生産コストの増大(輸入材料と国産材料の価格差が縮小しコストアップになる)
(4) 少量多品種生産が出来なくなる(機械オペレーターの教育が遅れているため、大量生産品が増加する)
(5) 完成品輸入の見直しと品質要求の見直しが必要(海外工場でのOEM生産の見直し・顧客要求の品質検査の再構築)

このような問題があるため「すべてを国内生産に移行」することは非常に困難と考えられます。そのため、2017年は国際価格上昇と国産品価格上昇を踏まえた「トータルコストの低減」を提案することが重要となってきます。

株式会社ライヴ・ファブレスは、製造工場とともに情報を共有しながら「トータルコストの低減」ができるよう取り組んでいます。

〈国土交通省 住宅局報道発表資料〉




2016/12/21

日本のねじ工業の行方は?

今年もあと僅かとなり、バタバタと気忙しい日々を送っています。
今年を振り返ってみて、日本のねじ工業界の現状で気になったことが3つほどあります。

(1) 小ねじメーカーがボルトメーカーを子会社化 → 業界再編?
(2) 鋲螺商社がステンレスボルト・ナット専門商社を子会社化 → 販路拡大?
(3) JIS認証工場の海外取得 → 国内メーカーは?

弊社では、建築用ねじ・タッピング・ドリルねじを主体として開発・販売していますが、2016年夏以降の現象として、業界の再編や既存国内工場での生産危機が心配されるようになってきました。

その原因は、機械オペレーター(職人さん)の高齢化・技術伝承の未達・機械設備の老朽化など、多くの工場が同じ問題を抱えていることにあるようです。また、ねじ製造には金型が重要になりますが、ねじ金型業界においても後継者不足と技術の伝承ができないなど同じ問題で、新しい製品を作り出すことに時間が必要になっているようです。

さらに最近は、ねじの材料においても海外材料が多く流入しているために、ねじの製造後の熱処理などにも影響が出ています。ねじ製造は、ねじ工場+熱処理工場+表面処理工場の協力体制で商品に生まれ変わりますが、商品ができるまでに材料のばらつきや金型のばらつきが大きいと、若いオペレーターでは対応しきれないようです。

精密機器関連や自動車関連などでも、同様の問題が発生し大量リコール発生の要因にもなっているようです。ねじ工業界を含め日本の工業界全体が多くの問題を抱えつつある今、しっかりと将来を見据えながら目の前の課題に取り組んでいくべきではないでしょうか。


2016/3/11

建築用ねじのJIS規格品の現状について

JIS規格は昭和24年の工業標準化法制定以来、半世紀以上の歴史があり、工業製品の品質向上に貢献を果たしてきています(日本国内の工業標準規格)。
これまでも経済のグローバル化をはじめとする環境変化に対応し、制度の充実が図られてきましたが平成16年には、規制緩和に伴う基準・認証制度の見直しや、適合性評価制度の国際整合化などを図るため工業標準化法が改正され、民間認証機関が製品認証を行う新しいJISマーク表示制度がスタートしています。

※製造規格だけでなく品質規格・販売規格も厳格になり、製品個別の認証が必要になりました


JIS規格品は流通しているのか?

建築基準法令や施工令の中でJIS規格品の項目がよく出てきますが、実態はどのようなものか案内します。
新JIS規格認定品は、旧JIS表示許可工場でも個別認証を取得する企業が少ないため一般的な流通が難しく、旧JIS規格での製造が継続される場合が多く、流通在庫品の入れ替えが非常に困難のようです。ねじ部品の場合、JIS規格が改定され規格変更が行われたとしても在庫の廃棄や返品もできないため、長期間にわたり旧規格品が流通しているのが現状です。

(注意) 新・旧JIS規格品と製品規格準拠品・規格外品が混在して流通しています。
※新JIS認証工場であっても一部の製品しか認証を取得していない場合があります。


JIS規格品の購入について

  • 要求されているJIS規格を確認したうえで、規格基準を明確にして発注しましょう
  • ※発注時にJIS規格品と明記しない場合、JIS規格準拠品や規格外品が送られてきます

  • 専門業者に発注しましょう(鋲螺卸会社や鋲螺専門商社に問い合わせしましょう!)
  • ※ホームセンターや通販サイトでの購入は非常に難しいようです(ほとんどが規格外品)

  • 図面や規格表を添付して発注前に規格の確認をしましょう(類似品や規格外品を購入しないため)
  • ※JIS規格品を購入する際は、製品検査記録・材料証明書なども添付を依頼しましょう

  • JIS規格品が入手できない場合は、製品規格整合表や性能認定書等を入手しましょう
    ※構造計算や強度区分・耐久力が必要な場合は、必ず必要になります


  • 構造強度に係る場合は、認定金物や認定建材の指定の接合具(釘・ねじ類)を必ず使用しましょう。
  • 認定金物の場合は、指定接合具(釘・ねじ等)と一緒に販売するよう指導されていますので、他社品や汎用品での接合の場合は違法工事になってしまいます(金物や接合具の強度確認ができません)。

  • 指定建材の締結および壁倍率の要求がある場合は、新JISねじ製品または国土交通大臣の認定ビスやZN釘・CN釘やN釘等指定釘もしくは、新JIS認定品を使用しましょう。

  • (注意) 一般に販売されている、造作用ビス(コーススレッドや万能ビス)や汎用品の木ねじやタッピンねじでの接合は非常に危険です(強度確認や耐力保証ができません)。

  • JIS規格準拠製造品は、JIS認証品ではありません(品質規格や試験設備・試験項目が明確でない)。
  • 構造に係る接合の場合は、確認申請や瑕疵担保免責事項など特に重要になるので、発注前にJIS製品との比較試験データーや公的機関や認証機関の性能評価書を確認してください。


JIS認証品以外を使用する場合は、特に注意が必要になります。
建材や認定金物の接合には、指定接合具やJIS認定品を使用されることを推奨します。
安心・安全をコストでは測りきれません(汎用品・JIS準拠品等のメーカーでは保証できません)。
使用者の責任になりますので、特に注意が必要です。


2016/2/10

木造建築の見直しと接合金物について

最近、木造建築物の記事がよく見られるようになっています。
国家プロジェクトしての木造建築物について環境問題の見直しなどから国土交通省・農林水産省・環境省・総務省・文部科学省などによる木造建築物の技術革新と構造強度や工法の再確認が行われ、いよいよ大規模木造構造物件が建築されるようになってきています。
大型木造構造物件では従来の金物接合工法だけでなく、新しい接合技術の開発と建築ファスナー(ねじ・釘)の併用により、スピーディーな簡単施工が要求されてきます。
また、木材についても集成材やCLT材の仕様が確立されてきています。木造建築に用いるねじ・釘や接合金物は、Z金物やC金物・S金物として規格化され性能・耐力等の規格基準に適合したものを、原材料は基より製造工程・品質管理まで認証を受けた工場での生産が要求されています。
建築基準法令の中でも認定金物の使用を推奨しており、それ以外の場合はJIS規格品の使用が認められているようです。
では、JIS規格品とはどのようなものでしょう?
材料・製品規格・製造設備・品質管理・品質保証の各項目に適合した製造工場が生産したものが、JIS規格認定品になります。
接合金物や接合具は、認定品を正しく使用する必要があります。
次回は、JIS規格品の実態について案内します。